「銀行からお金を借りて借地上の建物をピカピカの新築に建替えよう!」
「相続で引き継いだ借地権を売却してお金に換金しよう!」
この様な前向きな場面において、地主が「抵当権設定承諾書」に署名してくれない・・・
署名してくれたは良いけれど、印鑑証明書を銀行に提出してくれない・・・
これでは、借地上の家を新築に建替えることは出来ませんし、借地を売却するにしても、買い手探しに大変苦労するハメになることでしょう。
なぜならば、銀行は抵当権設定承諾書がない限りお金を融資してくれないからです。
「せっかく住宅メーカーも決まったのに・・・」
「不要な借地権を売って資金繰りに充てる必要があったのに・・・」
この様に落胆しないためにも、知っておくべき抵当権設定承諾書のウラにある秘密を紐解いていきましょう。
抵当権設定承諾書とは?
企業や人が銀行からお金を借りるときには、多くの場合、銀行は担保を設定します。
担保というのは、もしも借主が返済できなかった際に、入れた担保を売却して返済に充てることで保全を取るために設定するものです。
抵当権は、担保という言葉が使われることが多いですが、基本的には意味は同じです。
土地の所有者ではないのに、借地権付建物に抵当権を設定しても大丈夫なの?
結論から言うと、これは大丈夫です。
その理由は、借地権の定義をしっかり理解すれば、どうして大丈夫なのかがわかります。
借地権というのは、借地借家法に基づく法律上の権利です。
自身が借りている土地においては、その土地に建物を建てるなど、自由に使えるという権利です。
つまり、借りている土地に商業ビルなどの施設を建ててもOKですし、アパートを建てて賃借人を入れても問題ありません。
また、その建物を抵当に設定して金融機関からお金を借りるのも、法律的には問題にはなりません。
しかも、借地権で土地を借りている人が建物を建て、その建物を担保にして金融機関から融資を受けるのに際し、法律的には地主からの承諾は必要ないとの規定になっています。
それなのになぜ、金融機関は地主に対して抵当権設定承諾書への署名・実印による捺印、印鑑証明書原本の提出を融資の条件とするのでしょうか?
銀行が地主の抵当権設定承諾書を必要とする意図とは?
重複しますが、借地権の上に建物を所有している人が、建物を抵当に入れて金融機関から融資を受けることは、法的には問題はありません。
法的には土地と建物は別の扱いになるため、土地を所有していなくても建物に抵当権を設定しても問題はありません。
また、借地の上に立っている建物に抵当権を設定して融資を受けるという点に関しても、法律の面では合法的な行為ですし、経済合理性という点も認められています。
それでも金融機関が、地主の抵当権設定承諾書がなければ融資しないという姿勢をとるのは、なぜなのでしょうか?
土地の賃貸借契約は、借地人が地代を問題なく支払い続けている期間は、地主の意向で契約解除することはできない。
しかし、一度でも地代の支払が遅れたり怠ったりした場合には、地主の方から返済不履行ということで土地の賃借契約を解除することができます。
もちろん、必ず地主が解除するというわけではありませんし、解除しなければいけないわけでもない。
しかし決定権は地主にあるため、借地人にとっては、地主の意向次第でその土地の使用権を失ってしまい、建物を取り壊して退居せざるを得なくなってしまいます。
もうお解りですよね?
金融機関にとって、抵当権として設定したはずの建物が取り壊されてしまうのは、担保の意味がなくなってしまいます。
せっかく設定した抵当権が無駄になるだけでなく、貸し倒れの事態にもなりかねません。
金融機関が地主から抵当権設定承諾書をとりたがるのは、こうした意味があるわけなのですね。
抵当権設定承諾書を地主が嫌がるのはなぜ?
初めて抵当権設定承諾書を借地人から依頼された場合には、どんな風にどんな承諾書を書けばよいのか分からないという地主は少なくありません。
金融機関が用意する書式には主に以下文言が記載されています。
承諾書を出す金融機関が大手の銀行などであれば問題ないですが、ヤミ金のような怪しいところだと当然NGになることでしょう。
まず、借地人から抵当権設定承諾書を依頼された場合には、地主は必ずしも承諾しなければいけないという義務がないことを理解しておきましょうね。
いろいろリサーチしてみて、どうしても承諾したくないという場合には、承諾する必要はありません。
しかし、地主が抵当権設定承諾書にサインしないことにより、関係者にマイナスが生じることもあるのです。
抵当権設定に承諾しない場合の4つのリスクとは?
借地人のリスク①
「金融機関から融資を受けられない」
借地人が金融機関から融資を受けられない可能性が高くなるという点です。
法律的には地主の承諾書がなくても融資を受けることは可能です。
しかし、それぞれの金融機関が貸し倒れリスクを抑えるための対策方法として、抵当権設定承諾書を設定しているわけですよね。
「抵当権設定承諾書を持ってきてください」と言う金融機関に対して、「承諾書がなくても法律的には借りられますよね」なんて言ったところで、融資を実行してもらえる可能性はないでしょう。
借地人のリスク②
「地主の意向で借地契約が解除される可能性」
借地人が地代を延滞すると、地主の意向で借地契約を解除できるためです。
そうすると、せっかく設備投資として建てた建物を、撤去解体しなければいけません。
まだまだ建物としての価値が残っているのに、さらに費用をかけて撤去解体するとなると、莫大な費用が掛かりますし、借地人にとっては大きな損害にもなってしまいます。
しかも、金融機関から受けた融資への返済は、建物がなくなっても消えません。
銀行のリスク
「借地権付き建物を担保にとれない」
金融機関にとっては、抵当に入れた建物が存在していることで、初めて担保としての価値を見いだすことができます。
しかし、万が一借地人のビジネスが傾いて地代の支払を延滞してしまったとしたら、地主の意志一つで借地契約は解除されてしまうでしょう。
そうなると、借地人はせっかく建てた建物を取り壊して退居せざるを得なくなってしまいます。
金融機関が地主から抵当権設定承諾書を取り付けている場合には、地代の支払が延滞した段階で、地主から速やかに金融機関に通知が入る取り決めとなっています。
しかし地主が承諾していない場合には、地主にはそうした義務は一切ありません。
そのため、金融機関が気づかない所で建物の撤去解体工事が行われていたり、気づいたら既に借地人が退居していたりという事態にもなりかねません。
もしも抵当に入れた建物に担保としての価値がなくなれば、金融機関にとっては貸し倒れリスクが大きくなってしまいますよね。
金融機関にとっては、これはなんとしても避けたいリスクですからね。
地主のリスク
「新たな借地人を見つけられない」
借地を利用する個人や法人のほとんどは、そこに建物を建てて暮らすまたは事業を展開することを計画しています。
しかし、もしも地主が抵当権設定承諾書を書かないという判断をする事が事前に分かっていれば、それでも借地を活用したいという人は、おそらくほとんどいないでしょう。
いたとしても相当安い金額でないと現実問題として取引は成立しないでしょうね。
借地の売買価格が安ければ安くなるに伴って、地主に入る各種承諾料なども安くなる理屈もありますからね。
つまり、抵当権設定に承諾しないことは、地主にとっては借地人を見つけることが非常に困難になってしまうと考えられますね。
合理的ではありません。
しかし、以前にもお伝えした通り、地主の本音は借地権の消滅を望んでいますから、借地の買戻しや借地の無償返還を目的とするならば、承諾しない方法もありなのかもしれませんね。
まとめ
抵当権設定承諾書への承諾を拒絶したとしても、地主に対する罰則や法的なペナルティはありません。
また、地主から提出された抵当権設定承諾書そのものには、基本的には法的な効力はありません。
あくまでも念書という位置づけとなります。
しかし、そこに金融機関が法的な拘束力を持つ文言を加えることによって、その文章には法的なパワーが宿ります。
こうすることによって、地主にも一定の責任を負わせ、金融機関は貸倒れのリスクを最小限に抑えようとするわけですね。
誰も貸倒れのリスクは負いたくないですからね笑。
それと、以前に抵当権設定承諾書の条文を、地主の意向通りに条文を二重線にて文字抹消、そして文字追加という形で訂正印オンパレード、書き換えまくっている抵当権設定承諾書の原本を見たことがありますよ。
相手は誰でも知ってるメガバンクでした。
私は、ほぼ全ての金融機関の抵当権設定承諾書のフォーマットをチェックしたといっても過言ではないし、ほぼ全ての金融機関に内容の書き換えの相談をしたことがありますが、これは衝撃的と言えるほどかなり稀なケースでしたね。
なお、抵当権設定承諾書についての私の考え方は、一方的に地主に義務を課すのではなく、地主による承諾書への署名等の対価として、借地人による承諾料の支払いをルールにしても良いというものです。
地主への配慮がお互いの関係性を円満にするのだと。
現状はこの類の承諾料が支払われることは、ほとんどありませんがね。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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