底地権と言ってもあまり聞きなれない言葉かもしれません。
しかし普段の生活の中でいつも利用している商業施設や、ビルなどの敷地が底地権であることって珍しい話ではないものです。
都会のど真ん中にも存在する底地権。
今回はあまり聞きなれないであろう底地権の歴史的背景や底地と借地に分れた理由、地主の悲痛ともいえる本音や底地の8つの有効活用などを盛りだくさんにお届けして参ります。
底地権とは?
底地は(そこち)と読みます。
底地とは、所有者が誰かに貸している土地のことを指します。
「貸地」や「貸土地」または「貸宅地」といった方がイメージし易いかもしれません。
土地という不動産には借地権や地上権などが存在して、土地を他人に貸すことで地代などの利益をあげることができますね。
地主は誰かに土地を貸すことで、その借地人はそこに家を建てて自分で住んだり、誰かに転貸したりすることができますよね。
この状態、つまり土地を誰かに貸して、そこに家やマンション、テナントビルなどの建物が建っている場合に、貸した土地を底地と呼びます。
この底地に関係して土地所有者が持つ権利を、底地権と言います。
また底地の所有者のことを
底地権者(そこちけんじゃ・そこちけんしゃ)
底地人(そこちにん)
地主(じぬし)
と呼んだりします。
底地権と似た用語の「借地権」との関係性や特徴は?
「底地権が地主側の権利を表すのに対して、借地権は借り手側の権利を表す」
つまり、同じ土地において、地主が持つ底地権と、借り手が持つ借地権が存在しているということです。
さて、借地権というのはただ単に土地を借りているだけでは発生しません。
その土地の上に住居やビルなどの建物があって初めて発生するものなのです。
底地権は借地権とセットになっているものですので、やはり更地の状態で土地を貸している場合には底地権は発生せず、あくまでも土地の上に建物がある場合にのみ存在することになります。
こうして考えると、底地権は地主が持つ権利であり、土地を貸すことによって生まれる地代、そして賃貸借契約による更新料を得るという目的があると言えますね。
一方で借地権とは、土地をその所有者から借りて、建物を建設して自分が住んだり他の人に貸したりできる権利ということになります。
同じ土地ではありますが、どちらの側から見るかによって権利の名前とその内容が変わってくるというのがポイントですね。
土地を貸して他の人がその上に建物を持っている場合には、同じ土地に二つの不動産が存在することになります。
土地そのものと、その上にある建物です。
固定資産税などは基本的に土地と建物を分けて考えて税額を計算するものですので、貸地で底地権を持つ人と借地権を持つ人が別の場合は、分けて課税がなされます。
実際に土地を利用しているのは借地人ではありますが、所有者は底地権者ですので、土地にかかる税金に関しては底地権者にのみ課税がなされるということですね。
底地権と借地権の歴史
底地権と借地権はそれぞれ、地主と借り手の権利を示すものです。
これらの権利には力関係が存在します。
つまり、要望を通すために地主の方が強かったり、借り手の方が強かったりするということです。
この力関係は時代によって変動してきました。
江戸時代くらいまでは、圧倒的に底地権つまり地主の権利が強い状況が見られていました。
地主が借り手に対して「土地から出ていけ」と言えば、その要求が通っていたのです。
しかし、社会的に見ると地主は経済的にも強い立場を持っていて、借り手は社会的弱者となっているケースがほとんどでした。
そのため、近代になるにつれて、借り手の権利を保護または強くしようとする動きが目立つようになりました。
なぜ土地の所有者なのに、地代を上げるのも一苦労なのか?借地人は半永久的に土地を利用出来るのに、地主は半永久的に土地を自己利用できない。地代の額だって、土地の賃貸借契約が始まった当初と比べ、今では経済が発展、物価も土地の価格も[…]
こうした歴史の流れによって、次第に底地権よりも借地権の方が強い、つまり借り手の要求の方が通りやすい状況が生まれてきたのです。
とはいえ、借り手が社会的弱者で保護されるべきというのは、一定程度ふさわしい考え方ではありますが、時代によってこれも変わってきます。
実際に現代では土地の所有者の中にも資金繰りに困っている人もたくさんいますし、借り手の中には資金力が豊富な大企業がいることもありますよね。
そのため、その時々の情勢を考慮して、法律を改正して底地権と借地権の力関係の微妙なバランスを取ってきたという歴史があります。
今の時点では、底地権よりも借地権の方がかなり強い状況が見られますが、時代の流れによってこれからさらに力関係が動いていく可能性もあるということですね。
実際の問題として、現在の状況では底地権者はある意味不利な状況に立たされていますので、状況が変化すると助かると考えている地主は多くいるのが現実です。
なぜ「底地」と「借地」に分れたのか?
底地と借地に分かれた理由①
「弱者であった借地人を保護するため」
同じ土地に関係する権利でありながら、底地と借地という二つの異なる権利に分けられたのは、主に上記の歴史が関係しています。
昔は土地には、いわゆる所有権という考えしかないに等しい状況でした。
地主ばかりが権利を持ち、借り手には権利らしいものは存在していなかったために、地主側の都合で要求を通すことができていたのですね。
ところが、それでは弱者である借り手が不利を被るばかりだということで、明治時代になって借地権というものが法律によって定められるようになったわけです。
こうして、同じ土地でありながら、地主側の権利と借り手側の権利の二つが存在することが示されたというわけですね。
法律の改正が時代と共に進むことによって、はっきりと底地権と借地権という異なる性質の権利が明文化されて、その内容も定義されることによって、底地と借地の分類がされたのですね。
底地と借地に分かれた理由②
「税制上も2つに分けた方が便利なため」
先述の通り、原則としては、このような借地人の権利を保護するために分類が進んできたわけですが、税制上も底地と借地に分けた方が便利であることが明確になってきたというのも関係しています。
借地における不動産利用の幅が広がってきて、借地上に建てたテナントビルや集合住宅によって家賃収入を得る人も増えてきています。
当然、そこには税金がかかるわけですね。
投資物件は往々にして資産価値の高い建物となるため、その分だけ固定資産税も高くなります。
一方で、土地自体は所有者の持ち物ですので、土地に関する固定資産税などは所有者から徴収しないといけません。
そこで、底地権者と借地権者を分けた方が、税金の徴収が分かりやすく実行しやすいというメリットが生まれるわけですね。
時には土地そのものの資産価値よりも、建物の不動産価値の方が高いということもありえますので、きちんと両方に課税することで確実な税制施行ができるというわけです。
底地権者(地主)の悲痛とは?
今まで見てきたように、土地所有者と借り手の双方の権利を明確にするのが底地権と借地権という権利の分類です。
そのため、土地のオーナーからすれば権利が明確になって、様々な手続きがしやすいというメリットがあります。
仮に底地と借地の分類がはっきりしていないなら、固定資産税などは土地所有者にまとめて請求される可能性が出てきますよね。
そうなると、地代とは別に税金立て替え分の徴収も土地所有者がしないといけないので面倒が増えてしまいます。
底地と借地がはっきりしているからこそ、税制に関する手続きも両方の権利者に分けることができて楽なのですね。
こうしたメリットがあるものの、底地権者の多くの本音はデメリットに向いていることが多いですね。
地主の悲痛①
「借地借家法などによって、底地と借地では明らかに借り手の権利の方が強い」
まず、一度土地を貸すとなかなか返してもらいにくいという事情がありますね。
もちろん、賃貸借契約によって賃貸の期間が決められることもありますが、多くの場合それを基にしてすぐに土地を返してもらうことは難しいのが実情です。
地主の悲痛②
「地代を上げるのも困難」
契約期間中に地代を上げるのも厳しい状況が見られます。
路線価格の変動などによって、底地の地代を上げたいと思っても、それが通らないことが多いのですね。
地主の悲痛③
「売却し辛い」
何よりも厄介なのが簡単には底地を売買しづらいという点です。
固定資産税の方が地代よりも高く付いてしまうことも珍しくありませんが、それを売却するのはかなり大変で苦労していると考える底地権者は少なくありません。
もちろん、地代の方が高く利益が出ているのであれば売れる可能性は出てきますが、やはり底地は制限が多いため、その状態で買うためには、よほどのメリットがないと厳しいものなのですね。
地主の悲痛④
「ローンが組み辛い」
売り辛いということは、抵当権の設定などもしづらいということになりますよね。
底地を担保にしてローンを組もうと思っても、借地権がある状態では価値がないと見なされてしまうことも往々にしてあるのです。
このように、底地権は地代を高く設定することができれば良いのですが、そうでないと借地権との関係で面倒に思えることが多いというのが底地権者の本音で多く見られるところです。
底地権の資産価値とは?
借地権と比べると底地権の資産価値は割安となります。
その一つの指針となるのが、底地の資産価格の評価ですね。
相続が発生する時に不動産の資産価格の評価がなされますが、その際には、同じ土地でも借地権分と底地分に分けて評価額が決められます。
たとえば、一つの土地のトータルでの評価額のうち、90パーセントが借地権側にあり、底地は残りの10パーセントとされることがあります。
路線価の評価が1,000万円の土地であれば、借地権者が持つ資産価値は900万円で、底地権者は100万円しかないわけですね。
つまり、同じ土地でも底地のほうがずっと低い資産価値となってしまうということですね。
このパーセンテージは地域によって異なりますが、借地権の方が高めに設定されていることがほとんどなのは変わらないです。
しかし、こうした事情で底地権は借地人との権利関係のせいで低く見られがちですが、これもエリアや立地条件によるわけですね。
借地権側が30%、残りの70%が底地権とされることもあります。
都心のビルなどがたくさん建っている商業地域などでは、借地権割合が高くなる傾向にあり、逆に農村などの住宅がまばらな地域だと借地権割合は低くなる傾向になるということです。
添付の国税庁が公表している路線価図を参照ください。
借地権割合がB(借地権:80%・底地権20%)やC(借地権:70%・底地権30%)の目立つ商業地域のため借地権割合が高めに設定されております。
しかし、土地価格が高いエリアでは底地であっても、高い資産価値を持つことになります。
また、借地権割合はあくまでも相続税額を算出するものであり、実務では借地権割合の通りに売買されることは殆どありません。
もしあったとしたら、底地や借地の取引経験の少ない方が中心となった取引であったのでしょう。
また、資産価値という面では、理想を言えば路線価と連動して地代が上がっていくということですが、現実には難しいケースが多いので最初の賃貸借契約の際に適正な地代を設定することが非常に重要ということになります。
底地権の有効活用方法×8
底地はなかなか取り扱いが難しい権利の1つ
だからこそ上手に取り扱って所有者に利益をもたらしましょう!
底地の有効活用方法①
「底地の単純売却」
まず、売却という手段です。
前述の通り、基本的には底地権は売却がし辛い権利です。
とはいえ、地代によってその難度は大きく変わります。
地代が高く、固定資産税よりもある程度高い状態であれば、安定して利益を与えてくれますので、当然売り手を見つけやすいと言えますね。
たとえ地代がそれほど高くないとしても、路線価格が上昇傾向にある、現在の地代よりも明らかに路線価格もしくは予測される価格が高いという場合も、売り手を見つけやすいのです。
というのも、契約更新などの条件を変更できるタイミングがくれば、今よりも高い地代にできる可能性が高いからですね。
将来性を見て購入したいと考える人が現れるということです。
特に底地を専門とするプロの不動産会社が存在していて、他ではなかなか買い取ってくれないような土地でも、専門業者であれば引き受けてくれることがあります。
底地の有効活用方法②
「借地人と協力して所有権として売却する」
ポイントは、売買代金をどの様な割合で配分するかという点になります。
底地単体や、借地単体で売却するよりも可能性としては俄然売り易いでしょう。
底地の有効活用方法③
「ローンを組む際の担保とする」
もう一つの有効活用の方法は、ローンを組む際の担保とするというものですね。
前述した通り、簡単には抵当権を設定してもらえない権利ですが、やはり地代が高い、土地そのものの評価が高いといったケースでは、抵当権設定ができますよ。
それを基にさらなる不動産投資などを行えますので、少なくとも検討する価値があります。
底地の有効活用方法④
「相続税の節税」
底地権の特徴の一つに、借地権に比べると資産評価額が低くなるという傾向があります。
これを生かして、相続税を節税するという活用方法もありますよ。
資産評価額が低ければ、当然相続税も低くなりますので、少ない負担で土地を相続することができるというわけですね。
相続前に底地とすることで、資産評価額を下げて相続人への支払い負担を抑えてあげるというやり方もあります。
その際、地代を高めに設定することができれば、たとえ資産評価額が低くなってしまったとしても、安定した収入を相続人に与えることができますのでメリットがありますね。
底地の有効活用方法⑤
「借地人に購入してもらう」
そして、借地人に底地を購入してもらうという方法を考えることもできます。
借地権だけだと住宅ローンなどが組みにくい傾向があることを利用するのですね。
借地人が土地にある建物を建て替えたい時、底地権が設定されている状況だと、住宅ローンの審査には通りにくいため、その機会に底地を買い取ってもらうということです。
こうすれば、借地人は土地の所有権を持ち、ローンを組むのがかなり簡単になります。
底地権者は扱いにくい底地を売ることができますので、お互いにとってメリットが大きな取り扱い方法だと言えますね。
底地の有効活用方法⑥
「借地権を買い戻す」
借地権を買い戻すことで、底地権を所有権化するということです。
この方法により売却し辛い負の不動産から資産価値の高い不動産へと生まれ変わります。
底地の有効活用方法⑦
「借地人と協力し合い土地を二分割し、それぞれの底地・借地をそれぞれに所有権化する」
土地を分割するのに土地家屋調査士に依頼する確定測量費用などが別途生じたり、境界で揉めている等の理由により境界を確定できない場合などは、原則このスキームは使えません。
借地人が家を建て替える計画などがあるのならば、この様な提案はお互いにとってプラスに作用することもあるでしょう。
底地の有効活用方法⑧
「土地を借地権界(しゃくちけんかい)の通りに分筆する」
借地権は、1つの土地、すなわち1つの地番・一筆の土地の上に、複数存在する場合が多いものです。
この場合は、各々の使用範囲が境界線となりますが、このラインは、借地権と借地権との境に借地権界といって公法上の境界標ではない境界に境界標を入れて明示したり、図上点といって図面上で使用範囲を示したり、木や石を置いて境界を表したり、赤や黄色のペンで印をつけるケースなど実に様々です。
当然に借地権に公法上の境界はないですからね。
現在の底地をそれぞれ独立した底地権にするために、借地権界の通りに土地を分筆・分割するのです。
これは買手側が、住宅ローンを利用する場合もとても有効に働きます。
しかし、底地権の取得の経緯が売買であり、尚且つ宅地建物取引業免許[宅地建物取引士免許のことではありません]を持たない法人や個人が、転売目的でこの切り売りをしてしまうと、宅地建物取引業違反で逮捕されます。
無免許運転による反復継続取引というものです。
毎年こういった不動産事犯で検挙される法人や個人がおります。
従って、底地の取得の経緯が相続の場合で納税資金をスムーズに手に入れるためなどの理由による行為である必要があります。
事業性の低いものでないと警察庁判断によってはリアルに逮捕されますので、細心の注意とともに相続発生時に備えて今から準備をはじめられることをお勧めいたします。
まとめ
今回は底地権についてを解説してみました。
底地権は、土地そのものは地主さんの所有権ですが、借地権が存在する限り自由に利用することが出来ない等の様々な制限があることがわかりました。
従って一部ではとてもネガティブな表現で呼ばれることがあります。
底地権 + 借地権 = 所有権 左記のような簡単な方程式では成り立たないものなのですね。
しかし上述の有効活用方法によっては、その資産価値を上げることで関わる人がみんな〇(まる)になる可能性も秘めています。
底地が高く売れれば納税額も増えますから、区や市や村や都や県や国に関してもWINでしょう。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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