ご存知でしたか?
土地の賃貸借契約における更新料は、法律で定められている正式な制度ではないことを。
しかし不動産取引の慣習として、地主(底地人)と借地人とで授受されてきた大切な金銭です。
地主との良好な関係を築き続けるためにも大事な交換手段(お金)です。
しかし土地賃貸借契約の中身を除くと、
「この更新料、あり得ないくらい高くない?」
「著しく安くない?」
との事実に遭遇することがあります。
だからこそ、今回は、更新料とは?
からはじめまして
正しい更新料を算出するための正しい知識などについてをお伝えしてまいります。
借地の更新料とは?
更新料は法律によって定められている正式な制度ではありません。
更新料のやり取りがないと更新がされないということはないんですね。
あくまでも不動産取引の習慣の一つとしてなされているだけで、法律的な根拠はありません。
借地権は底地権者である地主から土地を賃貸する契約をすることによって発生しますよね。
借地権は一度契約したら永久的に存続するというものではなく、消滅するまでの存続期間が定められています。
契約書の中でその期間が記載されていれば、その年数が存続期間ということになりますね。
記載がない場合は、借地借家法に基づいて30年が存続期間です。
しかし、存続期間が終われば借地人はその土地から去らなければならないわけではありません。
更新をすることによって、その契約を維持できるというわけですね。
しかも、原則として借地人が望めば更新は可能です。
その更新の際に支払われることが多いのが更新料です。
いわば契約の更新をするための手付け金のようなものですね。
なお、借地権の更新は借地借家法によって定義されている考えですが、旧法か新法かによってもその時期が違うんですね。
【旧法借地権と新法借地権の違い】
平成4年の8月に法律が改正されていますので、それ以降に行った契約かそれ以降かによって、存続期間が変わってきます。
上の表の通り旧法では、堅固建物は30年以上で非堅固建物は20年以上となっています。
堅固建物というのはRC造りなどのビルに当てはまるもので、非堅固建物は木造の住宅が多いですね。
特に契約書において期間を定めていない場合は、最低期間である非堅固建物の20年、堅固建物の30年が適用されることになります。
一方で、新法になるとこの建物の種類による差はなくなり、一律30年となっているんですね。
そのため、平成4年8月以降に行った契約では、どの建物であってもすべて30年が存続期間となり、その期間が満了すると更新という手続きを踏むことになります。
このように、更新料の支払いは30年に一度というかなり頻度の少ないものですから、借地人としてもその存在を忘れてしまっていたり、更新料の予算を考慮に入れていなかったりすることが多いものです。
そして、多くの場合更新料はそれなり高額になりますので、更新手続きをする段階になって借地人が驚き、支払いトラブルが起こりがちなんです。
そのためにも、しっかりと更新料についての知識と理解を深めて、スムーズに支払いをしてもらえるようにすることが大事と言えますね。
冒頭にもあるように、更新料はそもそも法律によって定められているものではなく、法的義務はありません。
ただし、借地人に支払い義務が発生するケースがあるので、どの様な場合に支払い義務が生じるのかをまずは見ていきましょう。
旧法借地権と新法借地権の違いってなんだったっけ?とちょうど今、気になっていませんでしたか?1992年に借地借家法が制定されて、様々な点において借地に関する権利の変更が加えら[…]
更新料の支払いが義務づけられるケース①
「土地の賃貸借契約書に更新料の支払いが明記されている」
これは借地人から見ても明らかなものですので、必ず賃貸借契約を交わす時には、最初から更新料の支払いをすることを明記しておくべきです。
更新料の支払いが義務づけられるケース②
「過去に借地人が支払った場合」
実際に支払いに応じたということで、更新料についての合意があったと見なせるからですね。
かなり昔の話とはなってしまいますが、更新料の領収書などがないかどうかを確認することでもトラブルを避けられます。
また、将来のためにも更新料の支払いに関する書類は、ずっと保管しておくようにしてくださいね。
更新料の支払いが義務付けられるケース③
「契約書に明確に記載されていなくても、借地人との間で何らかの合意があった場合」
契約更新の時期が近づいてきたら、更新料の支払いを求めることを伝えて、それについて合意してもらうことで、書面に記されていなくても支払い義務が生じるということですね。
ただし、やはり書面になっていないということで、言った言わないのトラブルになることもありえますので、しっかりと文書の形で残しておくのが賢明です。
更新料の相場を知ることが大事
地主?
更新料は法令で明確にされている制度ではないので、その金額を算出するに当たっての規則のようなものは存在しないのですね。
そのため、更新料の金額は慣習によって決められることが殆どなんです。
そのため、いわゆる相場というものがとても大事になってきます。
多くの土地の賃貸借でこのくらいの更新料となっているので、うちもその相場に合わせると言えるからです。
借地人としても、相場感に合っているのであれば拒絶しづらくなりますので、このポイントを押さえておくことはとっても大事ですね。
また、それぞれの地域や土地区分によって異なる習慣があるため、更新料の相場も地域によって大きく変わることがあります。
そのため、まずは地元の不動産会社や他の地主さんに相談してみて、いくらくらいが相場となっているかを確認してみてください。
その上で、一般的に言われている相場に更新料が近いかどうかをチェックしてみてください。
借地権更新料の3つの簡易計算式
更新料(借地権)の簡易計算式①
最も一般的な計算式ですね。
このうちの「5%」という割合は、それぞれの土地の資産価値や建物の価値などによっても変動しますので、概算値と考えることができます。
路線価というのは、毎年国税庁が発表している不動産の課税価格を計算する基準を示すもので、国税庁のホームページで確認できますよ。
不動産の相続や贈与に伴う相続税及び贈与税を評価する際の公式な不動産評価の金額が分かりますので、更新料の信頼性を高めることができるのがメリットですね。
借地権割合も、路線価と一緒に国税庁のホームページに記載されています。
借地権割合も不動産の課税価格を算出するための基準を示すものであり、同じ土地において、底地権との対比で確認することができます。
具体的には、路線価の表では「400C」などの記載が地図上にありますので、自分の土地がいくらになっているのかをチェックします。
なお、「400」という数字は1平米当たりの単価が40万円であることを示していますよ。
そして「C」というのは借地権割合を指していて、70パーセントであることが分かります。
●路線価:40万円/平米
●面積:100平米 ※整形地
●接道:1方向
●借地権割合:70%
40万円(路線価)×100平米(土地面積)×70%(借地権割合)×5%路線価を用いた更新料は、約140万円
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更新料(借地権)の簡易計算式②
これは非常に単純な計算方法で、現在の地代から計算するだけです。
ただし、この方法だと上記の計算方法よりも、かなり高い金額になってしまうことが多いです。
そのため、狭小地や元々地代がとても安いという場合には有効ですが、一般的な土地では借地人にとって厳しい金額となってしまいますね。
計算をするに当たっての根拠も特になく、借地人が納得してくれない可能性が高いので、あくまでも参考程度にした方が良いでしょう。
●年間地代:120万円
120万円(年間地代)×4~8年間地代を用いた更新料は、約480万円~約960万円
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更新料(借地権)の簡易計算式③
相場を見るために使える計算式ですね。
パーセンテージは地域や土地の利用状況によって変動します。
都会であればあるほど、パーセンテージは上がる傾向にあります。
この計算方法はシンプルで分かりやすいのがメリットで、さっと相場感を確認できます。
ただし、借地権と底地権の対比がなされていないので、利用価値が高い土地においては更新料が安くなる傾向がありますね。
地方部の住宅などでは使いやすい計算方式ですが、商業地域では地主に不利となってしまうこともあるので注意しましょう。
●路線価:40万円/平米
●土地面積:100平米 ※整形地
40万円(路線価)×100平米(土地面積)×1.25(係数)0.03~0.06更地価格に基づいた更新料は、約150万円~約300万円
更地価格を出すためには、路線価を使うことが多いので、いずれにしても一番目の計算方式に近くなります。
それならば、一番目の式を活用した方が正確に近づくというのも考慮したい点ですが、一般的な簡易計算はマイナス面も垣間見れるものです。
その理由は、この計算式では正確に限りなく近い更地価格を計算できないという点に尽きます。
更新料(借地権)の簡易計算の注意点
注意点① 地代の金額が適正でない場合がある
賃料である地代の金額が適正でない場合が多々あります。
時代によって貨幣価値は変わるものですよね。
しかし、その古い時代の地代が今日現在においても適用されているケースが往々にしてあるためです。
また、地主によっては暴利な地代を請求していることもあるためです。
従ってそもそも論として、この場合は上記簡易計算式②を用いることは出来ません。
注意点② 更地価格の算出が困難
有名な更地価格の簡易計算式は、先ほど少し登場した以下の通りです。
なぜ?1.25を掛け算するのかといいますと、実勢取引は路線価より25%ほど高く売れる傾向があるためです。
係数と解釈いただければわかり易いかと思います。
しかし土地の特徴は千差万別、似ている土地こそあっても土地は唯一無二です。
従って上記簡易計算式③の更地価格を求める簡易計算では、限りなく正確に近い更地価格を算出することが出来ないものなのですね。
なぜならば
■土地の形状で言ったら奥行の距離や間口にいたっても同じとは限らない
必ずしもすべての土地が正方形とも限りません。
■不整形地の場合は、正方形に対してかげになる面積の割合も補正する必要があったり、面積や地区区分によっても補正率が異なります
一言で角地といっても二方向の道路ではなく三方向の道路に面している角地の場合もありますし、準角地の場合によっても評価額が異なります。
■土地の一部が崖地の場合は、単純に路線価に土地面積を掛け算するわけにはいかないし、土地の面積が広大地とまではいかなくても大きめのサイズの場合は規模過大の原理といってマイナス評点がつく
■土地の一部に都市計画道路がかかっている場合もありますし、1つの土地で都市計画が異なる場合だってある
■前面道路が狭いがゆえに再建築時にセットバック[道路後退]を必要とする土地の場合も考えらる
■隣地との間に地中や地上、空中に越境物があるケースもある
■土地と道路とに高低差のある場合もある
道路よりも土地の方が50cm高いのか?
2m高いのか?
5m高いのか?
逆に道路よりも土地が1m低い場合だってあります。
■擁壁の種別も異なる
RC擁壁なのか?
間地ブロック擁壁なのか?
玉石なのか?大谷石なのか?
擁壁にコンクリートブロックなどを増して積んでいる土地だって多いですからね。
擁壁に役所のお墨付きである検査済証の有無も更地価格に影響します。
etc・・・
路線価は、不動産鑑定士が熟慮したうえで公表している通り、精度は凄まじく高いのですが、土地には様々な個別要因があるのだということをご理解いただきたいのです。
なお、この内容に基づいて細かく書き記すと簡単に一冊の本になってしまうくらいの量となるため、この点はまたの機会にご説明しますね。
まとめ
更新料は地主にとって20年~30年に一度のお金を回収できるイベントです。
地代は通常の賃貸アパートや賃貸マンションと比べ安いものですからね。
従って先述した通り、地主の本音は借地権が消滅することを願っているものです。
更新を拒むには正当な事由が必要ですし、正当性が示されない場合は、原則として更新ができてしまうもの。
事例として地主の正当性が認められたケースなんて殆どありませんからね。
自身が所有しているのにも関わらず借地権付きの自己所有の土地を自己利用すらできない。
しかも借地権付きでは売り辛いし良い値が付かない。
繰り返しますと地主の心の奥底の叫びつまり本音は、早々に借地権が消滅することを望むものなのです。
更新料は借地人にとっては大きな支出です。
しかし気持ちよくお支払いいただくことを推奨いたします。
なぜならば、借地を売りたい、建物を建替えたい、借地を担保にお金を借りたい他、借地条件の変更を行いたいときに地主との関係性が悪いとスムーズに事が進まなくなる可能性があるためです。
しかし更新料が暴利なケースも往々にしてありますからこの点はお気を付けくださいませ。
地主が相場よりも高い更新料を請求してくるケースも実際にあるのです。
地主も十人十色ですからね。
従って当コンテンツより中立的な観点を学び、地主と借地人との関係性をより良く築いてくことに寄与できれば幸いです。
この度も最後までお読みいただき有難うございました。
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